シンセサイザーとキーボードの違いとは？初心者が選ぶべき正解を徹底解説

バンドを組みたい、あるいは自宅で音楽制作を始めてみたいと思ったとき、最初にぶつかるのが「楽器選び」の壁です。特にシンセとキーボードの違いについては、見た目が似ているため混同しやすく、どちらを買えば自分のやりたいことが実現できるのか分からずに迷ってしまう方が非常に多くいらっしゃいます。安易に安いモデルを選んでしまうと、作りたい音が出せなかったり、バンド練習で音が埋もれてしまったりと、後悔することになりかねません。だからこそ、購入前にシンセとキーボードの違いを明確に理解し、自分の目的に合った一台を見極めることが何よりも大切です。

一般的に「キーボード」はピアノやオルガンの音を手軽に鳴らせる鍵盤楽器全般を指し、スピーカーを内蔵しているものが多いのが特徴です。一方で「シンセサイザー」は、音色そのものをゼロから作り出したり、複雑に変化させたりすることに特化したプロフェッショナルな機材であり、創造性を無限に広げてくれる可能性を秘めています。この記事では、それぞれの楽器が得意とするジャンルや機能、そして電子ピアノやMIDIキーボードとの違いまでを網羅的に解説します。あなたにとって最高のパートナーとなる鍵盤楽器を見つけ、音楽ライフを素晴らしいものにしましょう。

シンセサイザーとキーボード、電子ピアノ、MIDIキーボードの機能比較表

自分に合う楽器を選ぶためには、まずそれぞれの楽器が「何ができて、何ができないのか」を整理する必要があります。以下の表は、主要な鍵盤楽器の種類と特徴を比較したものです。この表を見ることで、あなたの用途にマッチする楽器のタイプが一目瞭然になります。

表で確認した通り、シンセサイザーは「音を作る」ことに特化しており、スピーカーが内蔵されていないことが多いのが特徴です。ここからは、さらによくある疑問や具体的な選び方について、深掘りして解説していきます。

1. キーボードのシンセとは何ですか？定義と呼び方の境界線

「キーボード」と「シンセサイザー」という言葉の使い分けは、実は曖昧な部分があります。広義には、鍵盤が付いている電子楽器はすべて「キーボード（鍵盤楽器）」と呼ばれます。その大きな枠組みの中に、特定の機能を持った「シンセサイザー」や「電子ピアノ」が含まれているとイメージしてください。しかし、楽器店やプレイヤーの間で一般的に「キーボード」と言う場合は、カシオトーンやヤマハのポータブルキーボードのように、スピーカーを内蔵し、自動伴奏機能などが付いた、買ってすぐに音が出せる家庭向けの機種を指すことが多いです。

一方で「シンセサイザー」は、Synthesize（合成する）という言葉の通り、電気信号を加工して音を合成する機能を持った楽器を指します。ツマミやスライダーがたくさん付いていて、演奏中に音色をリアルタイムで変化させたり、自分だけのオリジナルの音を作り出したりできるのが最大の特徴です。最近では、初心者向けの「キーボード」にも簡単なシンセサイザー機能が付いていたり、逆にスピーカーを内蔵した「シンセサイザー」も登場していたりと境界線は薄れつつありますが、「音作りができるかどうか」が両者を分ける最も重要なポイントであると覚えておけば間違いありません。

2. シンセサイザーを使うメリットは？音作りと表現力の拡張

なぜ多くのミュージシャンが、手軽なキーボードではなく、操作が難しそうなシンセサイザーを選ぶのでしょうか。その最大のメリットは、圧倒的な「表現力の幅」にあります。プリセットされた音を選ぶだけのキーボードとは異なり、シンセサイザーは音の明るさ、立ち上がりの速さ、残響音の長さなどを自在にコントロールできます。これにより、曲の雰囲気に完璧にマッチした音色を作ったり、演奏中に徐々に音を激しく変化させて盛り上げたりといった、ダイナミックな表現が可能になります。

また、シンセサイザーはバンドアンサンブルにおいても強力な武器となります。ギターやドラムの大音量の中で埋もれない「抜けの良い音」を作ったり、逆にベースと一体化するような重厚な低音を出したりと、役割に応じた音作りが求められる場面で真価を発揮します。さらに、アルペジエーター（分散和音を自動演奏する機能）やシーケンサー（演奏データを記録・再生する機能）を活用すれば、一人では演奏不可能な複雑なフレーズをライブで披露することも可能です。単に鍵盤を弾くだけでなく、音そのものを操る楽しさを知ることができるのが、シンセサイザーを持つ最大の喜びです。

3. シンセサイザー MIDIキーボード 違いと代用可能性について

DTM（デスクトップミュージック）を始めたい方が特によく悩むのが、シンセサイザーとMIDIキーボードの違いです。決定的な違いは、「単体で音が出るかどうか」です。シンセサイザーは音源を内蔵しているため、ヘッドホンやスピーカーに繋げば音が出ますが、MIDIキーボードはあくまで「コントローラー」であり、パソコンやタブレットに接続してソフトウェア音源を鳴らすための入力装置に過ぎません。そのため、MIDIキーボードだけを買っても音は一切出ないので注意が必要です。

では、シンセサイザーをMIDIキーボードとして使えるかという疑問ですが、答えは「YES」です。ほとんどの現代のシンセサイザーはUSB端子を備えており、PCと接続すればMIDIキーボードとして機能します。これにより、自宅ではPCと繋いで作曲用の入力鍵盤として使い、ライブやスタジオには音源入りの楽器として持ち出すというハイブリッドな使い方が可能です。これから作曲もライブも両方やりたいと考えているなら、MIDIキーボード機能も兼ね備えたシンセサイザーを購入するのが、最もコストパフォーマンスが高く、将来性のある賢い選択と言えるでしょう。

4. エレクトーン キーボード 違いと演奏スタイルの差異

ヤマハの登録商標である「エレクトーン（電子オルガン）」と、一般的なキーボードやシンセサイザーは、演奏スタイルが根本的に異なります。エレクトーンは上鍵盤（右手）、下鍵盤（左手）、そして足鍵盤（左足）の3つを使って演奏する楽器であり、一人でメロディ、伴奏、ベースラインの全てを担当し、オーケストラのような豪華な演奏を完結させることを目的としています。そのため、基本的には据え置き型で重量があり、持ち運んで演奏することは想定されていません。

対してキーボードやシンセサイザーは、バンドの一員として特定のパートを担当したり、ピアノのように両手で演奏したりするスタイルが一般的です。持ち運びが容易で、様々な場所に移動して演奏活動を行うことができます。もしあなたが「一人で壮大な曲を演奏したい」のであればエレクトーンは素晴らしい選択肢ですが、「バンドを組みたい」「色々な場所で弾きたい」のであれば、キーボードやシンセサイザーを選ぶべきです。楽器としての構造が違うため、習得する技術も異なる点には注意が必要です。

5. シンセサイザー 電子ピアノ 違いとタッチ感へのこだわり

ピアノ経験者がシンセサイザーを触ったときに一番驚くのが「鍵盤のタッチ感」の違いです。電子ピアノは、アコースティックピアノのハンマーアクションを模倣しているため、鍵盤にしっかりとした重みがあり、指先の繊細なニュアンスを表現するのに適しています。しかし、その分本体が重くなり、持ち運びには不向きです。一方、多くのシンセサイザーは「シンセ鍵盤」と呼ばれる、バネを使った軽いタッチの鍵盤を採用しています。これは速いフレーズを弾いたり、グリッサンド（鍵盤を滑らせる奏法）を多用したりするのに適していますが、ピアノのような重さを求めると違和感を感じるかもしれません。

ただし、シンセサイザーの中にも「ピアノタッチ（ウェイテッド鍵盤）」を採用した88鍵モデルが存在します。これらはステージピアノとも呼ばれ、ピアノの弾き心地とシンセサイザーの多機能さを両立させています。もしあなたがクラシックピアノの練習をメインにするなら電子ピアノ一択ですが、バンドでピアノの音もシンセの音も使いたい、なおかつタッチにもこだわりたいという場合は、88鍵のピアノタッチ仕様のシンセサイザーを選ぶのが最適解です。自分の指が求める感覚と、演奏するジャンルに合わせて、最適な鍵盤の種類を選ぶことが大切です。

初心者から上級者まで！おすすめシンセサイザー＆キーボード10選

ここからは、最初の1台として最適なモデルから、プロも愛用する本格派シンセ、そしてDTMに必須のMIDIキーボードまで、厳選したおすすめの10商品を紹介します。 「何を買えばいいか分からない」という不安を解消し、あなたの音楽制作や演奏活動を強力にサポートしてくれる相棒が必ず見つかります。用途に合わせてベストな一台を選んでください。

1. 【音楽の扉を開く鍵】Roland GO:KEYS 3（GOKEYS3）

「楽器経験はないけれど、とにかく音楽を楽しみたい！」そんな初心者の願いを叶えるのが、RolandのGO:KEYS 3です。このキーボードの最大の特徴は、指一本でプロクオリティの演奏ができる自動伴奏機能です。コード進行を知らなくても、好きなジャンルを選んで鍵盤を押すだけで、まるでDJのように即興演奏を楽しむことができます。

スピーカーを内蔵しているので、届いたその日からすぐに音が出せますし、電池駆動にも対応しているため、リビングでもベッドルームでも、好きな場所がステージに早変わりします。ローランドのフラッグシップ・シンセサイザー譲りの高品位な音源「ZEN-Core」を搭載しており、音質の良さは折り紙付き。Bluetooth機能を使えば、スマートフォンの音楽を本体のスピーカーから流してセッションすることも可能。音楽を「習う」のではなく「遊ぶ」ことから始めたい方に、これ以上ない最高のエントリーモデルです。

2. 【伝説のサウンド】KORG microKORG

発売から20年以上愛され続けている、シンセサイザー界の生ける伝説です。プロのミュージシャンのステージセットには必ずと言っていいほど組み込まれているこのmicroKORGは、アナログ・モデリング音源による太くて温かいサウンドが特徴です。特に、付属のマイクを使ってロボットのような声を出す「ボコーダー機能」は、PerfumeやDaft Punkのようなテクノポップサウンドを手軽に再現でき、聴く人を一瞬で虜にします。

コンパクトなミニ鍵盤を採用しており、女性や子供でも弾きやすく、持ち運びも非常に楽です。レトロフューチャーなデザインは部屋に置くだけでインテリアとしても映えます。難しい音楽理論よりも、感覚的にツマミを回して音を変化させる楽しさを教えてくれる一台。バンドのサブキーボードとしても、初めてのシンセサイザーとしても、長く愛用できる名機中の名機です。

3. 【アナログの真髄】KORG minilogue xd

本物のアナログ回路が生み出す、圧倒的な音の厚みと存在感を体感したいなら、minilogue xdが最適解です。デジタルシンセでは再現しきれない、有機的で温かみのあるサウンドは、弾いた瞬間に心が震えるほどの感動を与えてくれます。さらに、デジタル・マルチ・エンジンを搭載したハイブリッド構成により、アナログの太さとデジタルのきらびやかさを融合させた、現代的でユニークな音作りも可能です。

高品質なエフェクト（リバーブやディレイ）も内蔵しており、これ一台で完成されたサウンドを作り込むことができます。鍵盤ごとの音程の揺らぎを目で確認できるオシロスコープ機能も搭載されており、音が形作られる様子を視覚的にも楽しめます。音作りを深く学びたい、自分だけのオリジナルサウンドを追求したいというクリエイター気質の方にとって、最高の実験室となるでしょう。

4. 【膝上の音響研究所】YAMAHA reface CS

往年の名機CSシリーズの遺伝子を受け継ぎつつ、現代の技術でコンパクトに凝縮したのがreface CSです。このシンセサイザーには液晶画面もメニュー階層もありません。目の前にあるスライダーを動かせば、ダイレクトに音が変化する。その直感的な操作性は、まるで音の彫刻を作っているかのような没入感を提供してくれます。

スピーカー内蔵で電池駆動も可能なため、膝の上に置いてソファでくつろぎながら音作りを楽しむことができます。8音ポリフォニック（同時に8音出せる）仕様なので、分厚いパッド音や複雑な和音演奏も余裕でこなします。エフェクト機能も強力で、歪みや揺らぎを加えることで攻撃的なリード音から幻想的なアンビエントサウンドまで変幻自在。いつでもどこでもインスピレーションを形にできる、クリエイターのための最高のスケッチブックです。

5. 【バンドマンの標準装備】YAMAHA MX61 BK

軽音楽部や社会人バンドでキーボードを担当することになったら、まずはこのMX61を選べば間違いありません。プロ用のフラッグシップモデル「MOTIF」シリーズから厳選された1,000音色以上を搭載しており、ピアノ、エレピ、ストリングス、シンセリードなど、バンドで必要な音色が全て高クオリティで揃っています。

重量はわずか4.8kgと非常に軽量で、女性でも片手でスタジオへ持ち運ぶことができます。PCとの連携機能も充実しており、USBケーブル一本でオーディオインターフェースとしても機能するため、自宅での宅録（DTM）環境の中心機材としても活躍します。リハーサルスタジオからライブハウス、そして自宅のデスクまで、あらゆるシーンに対応する万能さと信頼性を兼ね備えた、バンドキーボーディストの必須アイテムです。

6. 【オールインワンの決定版】KORG KROSS2 61

「これ一台で何でもできる」を具現化したワークステーション・シンセサイザーです。クラスを超えた高音質サウンドはもちろんのこと、歌やギターを録音できるオーディオ・レコーダー機能や、指一本でドラムや効果音を鳴らせるパッド・サンプラー機能まで搭載しています。これにより、PCを使わずに本体だけでバッキングトラックを作成し、それを流しながらライブパフォーマンスを行うといった高度な使い方が可能です。

本体重量はクラス最軽量級の3.8kg。電池駆動にも対応しており、ストリートライブなど電源のない場所でもパフォーマンスが可能です。背負える専用ケースも充実しており、機動性は抜群。自分のアイデアを形にし、それをステージで爆発させたいと願うアクティブなアーティストにとって、これ以上頼りになる相棒はいません。

7. 【音作りの冒険へ】Roland GAIA 2

シンセサイザーの複雑な仕組みを、視覚的に分かりやすくデザインしたのがGAIA 2です。ウェーブテーブル音源とバーチャル・アナログ音源を組み合わせたハイブリッド・エンジンにより、クラシックなシンセサウンドから、現代のEDMで聴かれるような過激で複雑な動きのあるサウンドまで、驚くほど簡単に作り出すことができます。

直感的なパネルレイアウトに加え、音の動きを可視化する「Motional Pad」を搭載。指でパッドをなぞるだけで、音色が劇的に変化し、誰にも真似できない独創的なフレーズを生み出せます。Roland Cloudにも対応しており、往年の名機のサウンドを追加することも可能。初心者には音作りの教科書として、上級者には新たなインスピレーションの源泉として、長く深く付き合える一台です。

8. 【DTMの司令塔】Novation Launchkey 61 Mk4

PCを使って作曲をするなら、このLaunchkey 61 Mk4が最強のパートナーとなります。Ableton Liveなどの主要なDAWソフトと深く連携するように設計されており、マウスを使わずに手元のコントローラーだけで録音、再生、ミキシングなどの操作をスムーズに行えます。鍵盤を弾くだけでなく、制作フロー全体を加速させるためのツールです。

コードモードやスケールモードなどの支援機能が充実しており、音楽理論に詳しくなくても、正しいキーで複雑なコード進行やメロディを簡単に打ち込むことができます。これにより、「良いメロディが浮かばない」というスランプを打破し、クリエイティブな作業に集中できます。自分の部屋をプロのスタジオに変えたいなら、このコントローラーの導入が一番の近道です。

9. 【ソフトとハードの融合】Arturia KeyLab Essential 61 mk3

「ハードウェアの操作感」と「ソフトウェアの柔軟性」を完璧に融合させたのがKeyLab Essentialです。この製品には、数千種類のヴィンテージシンセやピアノの音色を収録した強力なソフト音源「Analog Lab V」が付属しており、買ったその日から膨大な音色のライブラリを手に入れることができます。そして、それらの音色を手元のノブやフェーダーで直感的にコントロールできるのが最大の魅力です。

白い洗練されたデザインはデスク周りをスタイリッシュに演出し、制作へのモチベーションを高めてくれます。大型のディスプレイとクリック可能なエンコーダーにより、PC画面を見なくても手元でプリセットを選び、素早くエディットが可能。コストパフォーマンスが非常に高く、予算を抑えつつもプロ並みの音源と操作環境を一気に整えたい方に、自信を持っておすすめできるセットです。

10. 【ビートメイクの相棒】Akai Professional MPK Mini MK3

限られたデスクスペースや、カフェでのモバイル制作に最適なのが、このMPK Mini MK3です。25鍵のミニ鍵盤に加え、MPC譲りの高品質なドラムパッドを8個搭載しており、指ドラムでのビートメイクやサンプルのトリガーに威力を発揮します。世界中で最も売れているMIDIキーボードの一つであり、その実績と信頼性は揺るぎません。

コンパクトながらも、アルペジエーターやノートリピート機能を搭載しており、ヒップホップやトラップなどのビート制作に不可欠な要素が詰まっています。視認性の高いOLEDディスプレイや、パラメータを操作する8つのノブも装備。ラップトップと一緒にバッグに入れて持ち運べば、インスピレーションが降りてきた瞬間に、どこでもあなたのスタジオになります。ビートメーカーやトラックメイカーを目指すなら、まずはここから始めましょう。

まとめ：目的に合わせた選択で、音楽ライフはもっと輝く

シンセサイザーとキーボード、そしてMIDIキーボードの違いを正しく理解することは、あなたの音楽活動を成功させるための第一歩です。目的が曖昧なまま購入してしまうと、使いこなせずに埃をかぶってしまうことになりかねません。「バンドで色々な音を出したい」「自宅で作曲を極めたい」「ピアノの練習をしたい」、それぞれの目的に特化した楽器を選ぶことで、上達のスピードも楽しさも段違いになります。

今回紹介した10選は、どれもそれぞれの分野で高い評価を得ている素晴らしい楽器ばかりです。あなたの心に響いた一台を手に取り、新しい音楽の世界へ飛び込んでみてください。その鍵盤を弾いた瞬間から、あなたの毎日はもっとクリエイティブで、刺激的なものに変わるはずです。