かつてPCゲーマーは2枚のグラフィックボードで究極のパワーを求めました。しかしSLIやCrossFireが過去の技術となり「グラボ2枚刺しはもう意味がない」と思われていないでしょうか。いいえ、違います。現代のグラボ2枚刺しには全く新しい価値があります。この記事では最新の使い分け術とそのメリットを解説します。
ゲームのフレームレートを犠牲にせず高画質な配信や録画を同時に行えます。また3Dレンダリング中にもう一枚のグラボで快適に別の作業をこなせます。これはかつてのSLIとは違う「分業」という考え方です。この知識を使えばあなたのPCは単なるゲーム機から、真のクリエイティブ・ワークステーションへと進化します。
- SLIはもう古い!2枚のグラボを「独立」させて使う新常識
- ゲームと配信を完全両立。パフォーマンスを落とさない「分業」のメリット
- GeForceとRadeonの混在は可能?その答えと具体的な設定方法
- 【2025年最新】グラボ2枚挿しを実現するためのおすすめパーツ5選
SLIはもう古い。グラボ2枚『独立運用』という新常識
「グラボを2枚挿してもゲームの性能は上がらない」。これは半分正解で半分は古い常識です。かつて主流だったSLIやCrossFireのように2枚のグラボを「協調」させて単一のゲーム性能を向上させる使い方は、近年のゲームではほとんどサポートされなくなりました。しかし現代のPCパワーユーザーたちは2枚のグラボをそれぞれ全く別の作業に従事させる「独立運用」という新しい価値を見出しています。ここでは知られざる非SLIの世界を、その仕組みから具体的なメリットまで徹底的に解説します。
- 非SLI/CrossFireとは?2枚のグラボを独立して動かす仕組み
- 最大のメリット:ゲームをしながら、高画質配信や録画を「分業」する
- GeForceとRadeonは混在できる?AMDとNVIDIAの2枚挿し
- 必要なもの:マザーボードの選び方と電源(PSU)の注意点
- Windowsでの設定方法と、アプリでの指定方法
1. 非SLI/CrossFireとは?2枚のグラボを独立して動かす仕組み
非SLI/CrossFire環境でのグラボ2枚刺しとは、2枚のグラボをブリッジ接続せず、それぞれが独立したデバイスとしてPCに認識されている状態を指します。
通常は1枚目の最も高性能なグラボ(プライマリGPU)がメインモニターに接続され、ゲームや3Dアプリケーションといった最も負荷の高い描画処理を担当します。そして2枚目のグラボ(セカンダリGPU)はモニターに接続せず、特定のタスクを実行するための専用の「計算エンジン」として待機します。対応するアプリケーション側から「この計算は2枚目のグラボに任せる」という指示を出すことで、2枚のグラボがそれぞれ全く異なる作業を同時に並行して処理する究極の分業体制が実現するのです。
2. 最大のメリット:ゲームをしながら、高画質配信や録画を「分業」する
このグラボ2枚の独立運用が最も劇的な効果を発揮するのがゲーム配信や実況動画の録画です。通常グラボが1枚の場合、そのグラボは「ゲームを高フレームレートで動かす」という重労働と「その映像をリアルタイムで動画形式に変換(エンコード)する」という、もう一つの非常に重い労働を同時に一人でこなさなければなりません。
その結果ゲームのフレームレートが低下したり配信映像がカクついたりといった問題が発生します。しかしグラボが2枚あればこの問題を完璧に解決できます。プライマリGPUには100%の力でゲームの描画に専念させます。そしてセカンダリGPUに動画のエンコード作業を完全に丸投げするのです。この完璧な「分業」によりあなたはゲームのパフォーマンスを一切犠牲にせず、高画質で滑らかなプロクオリティの配信を視聴者に届けることが可能になります。
3. GeForceとRadeonは混在できる?AMDとNVIDIAの2枚挿し
グラボ2枚刺しを検討する上で多くの人が抱く疑問。それは「NVIDIAのGeForceとAMDのRadeonという異なるメーカーのグラボを一枚のPCに同時に挿せるのか?」ということでしょう。答えは明確に「YES」です。
現代のWindows OSは非常に賢く、NVIDIAとAMD両社のグラフィックドライバーが互いに干渉することなく共存することを許容しています。これにより例えば「ゲーム性能に優れたGeForce RTX 4070をプライマリGPUとして使い、動画再生支援機能に定評のあるRadeon RX 7600をセカンダリGPUとして動画視聴用のサブモニターに出力する」といった夢のような柔軟なシステム構築が可能になります。あなたのこだわりと用途に合わせて両社の「良いとこ取り」をする。それもまた独立運用の大きな魅力なのです。
4. 必要なもの:マザーボードの選び方と電源(PSU)の注意点
グラボ2枚刺しというパワフルな環境を安定して運用するには、それを支えるための屈強な土台が必要です。まず最も重要なのが「マザーボード」です。最低でも2本以上の物理的な「PCI Express x16」スロットを搭載していることが絶対条件となります。そして2枚のグラボが互いの熱でパフォーマンスを低下させないよう、スロット間に十分な物理的スペースが確保されているかという点も極めて重要です。
そしてそれ以上に注意を払うべきが「電源ユニット(PSU)」です。当然ながらグラボを2枚動かすには相応の電力供給能力が求められます。あなたが搭載したい2枚のグラボそれぞれの消費電力(TDP)を合計し、さらにCPUやその他のパーツの消費電力も考慮した上で、十分な安全マージンを確保した大容量の電源を選ぶ必要があります。電源容量の不足はシステムの不安定や突然のシャットダウンに直結します。
5. Windowsでの設定方法と、アプリでの指定方法
ハードウェアの物理的なセットアップが完了すれば、あとの設定は驚くほど簡単です。Windowsは接続された2枚のグラボを自動で認識して、それぞれの最適なドライバーを適用してくれます。あなたが主に設定を行うのはWindows側ではなく「アプリケーション」側です。
例えば代表的な配信ソフトである「OBS Studio」の設定画面。そこには「エンコーダ」を選択する項目があります。ここであなたは「NVIDIA NVENC H.264 (via GeForce GTX 1660)」といったように、エンコード処理を担当させたいセカンダリGPUを明確に指定することができます。同様に「DaVinci Resolve」のような動画編集ソフトでも、レンダリングやエンコードに使用するGPUを個別に選択することが可能です。どのグラボにどの仕事をさせるか。その采配を振るうのはあなた自身なのです。
【2025年最新】あなたのPCを覚醒させる!グラボ2枚挿しにおすすめのパーツ5選
自作PCやパーツの増設は静電気による故障のリスクが伴います。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)も電子機器の取り扱いに関する注意喚起を行っており、作業の際は静電気対策を万全にすることが推奨されます。ここではあなたの挑戦を成功へと導く信頼性の高いパーツを5つ厳選しました。
- ASUS TUF GAMING B760-PLUS WIFI
- Corsair RM850e PC電源ユニット
- ASUS TUF Gaming GeForce RTX 5070 OC Edition 12GB GDDR7
- MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC
- 玄人志向 AMD Radeon RX 7600 搭載 グラフィックボード
1. ASUS TUF GAMING B760-PLUS WIFI
2枚のグラボという強力なエンジンを安定して支えるための屈強なシャーシ。このASUS TUF GAMINGマザーボードはそのための全ての条件を高いレベルで満たしています。2本のPCIe x16スロットは重量級のグラボをしっかりと保持するために金属で補強されたSafeSlot仕様。そしてトップのプライマリスロットとセカンダリスロットの間には十分なスペースが確保されており、2枚のグラボのエアフローを決して妨げません。
軍用グレードのTUFコンポーネントで固められたその堅牢な作りは、長時間の高負荷な作業においても揺るぎない安定性を約束します。まさにあなたの2GPUシステムの信頼性の根幹を成す最も重要な基盤です。
2. Corsair RM850e PC電源ユニット
2枚のグラボという大食漢のモンスターにクリーンで安定したエネルギーを供給し続ける強力な心臓部。PC電源の世界において絶対的な信頼を集めるCorsair。その中でも特に高い評価を得るRMeシリーズはあなたのパワフルなシステムに完璧な答えを提示します。
850Wという十分な出力はハイエンドなプライマリGPUとミドルクラスのセカンダリGPUの組み合わせを余裕で駆動させることが可能。そして電力変換効率の高さを示す80 PLUS Gold認証は省エネ性能と発熱の少なさを保証します。ケーブルは必要なものだけを接続するフルモジュラー式。ケース内のエアフローを改善しあなたの2枚のグラボが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を作り出します。
3. ASUS TUF Gaming GeForce RTX 5070 OC Edition 12GB GDDR7
あなたのPCを次世代の戦場へと導く絶対的エース。このTUF Gaming RTX 5070は最新世代のアーキテクチャを採用し、これまでの常識を覆す描画性能を実現します。プライマリGPUとしてこの一枚にゲームの全てを任せることで、あなたのシステムは真の力を発揮します。
超高速なGDDR7メモリと広帯域なPCIe 5.0インターフェースを搭載。4Kゲーミングやレイトレーシング、AIを活用したクリエイティブ作業で圧倒的なパフォーマンスを発揮します。ASUSが誇るTUFグレードの堅牢な設計と強力な冷却システムは、長時間の高負荷なセッションでも揺るぎない安定性を提供。
このカードが最高のゲーム体験を描き出している間、あなたの配信や録画といった重いタスクはセカンダリGPUに任せましょう。パフォーマンスを一切妥協しない究極の分業体制を構築するための、まさに心臓部となる一枚です。未来のゲーミングとクリエイションはここから始まります。
4. MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC
主役(プライマリGPU)が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、その影で最も厄介で最も重要な仕事を黙々とこなす。このRTX 4060はそんな「最強のナンバー2」としてあなたの2GPUシステムを完成させるための最高のセカンダリGPUです。
その最大の武器は最新世代のNVIDIA Encoder (NVENC)。あなたのゲームプレイをCPUやプライマリGPUにほとんど負荷をかけることなく驚くほど高画質で滑らかな動画へと変換します。消費電力も非常に低く2スロットに収まるコンパクトな設計は、プライマリGPUのエアフローを決して邪魔しません。最小のコストと最小の負荷で最大の配信品質を手に入れる。最も賢明で最も合理的な選択です。
5. 玄人志向 AMD Radeon RX 7600 搭載 グラフィックボード
GeForceとRadeon。二つの異なる才能を一つのPCに共存させる。そんな自作PCの深淵なるロマンをあなたに。このRadeon RX 7600は優れたコストパフォーマンスと安定した性能で、あなたの2GPUシステムの可能性を無限に広げます。
例えばプライマリのGeForceでゲームをプレイしながら、AMD独自の高画質化技術「FidelityFX Super Resolution」を活用した動画をセカンダリのこのRadeonで再生する。あるいはFreeSync対応のゲーミングモニターを最大限に活用するためにRadeonをプライマリとして使う。その組み合わせと使い分けはまさにあなた次第。玄人志向ならではのシンプルなパッケージングと価格設定も魅力。あなたの探求心を刺激する一枚です。
まとめ:「1+1」を「2」ではなく、「無限大」にする。それが独立運用
かつてゲーマーたちが夢見たSLIという名の下のパワーの足し算。しかし現代のPCパワーユーザーがたどり着いた非SLIという新しい地平は、単純な足し算ではなくそれぞれの才能を最大限に活かす「分業」という名の下の可能性の掛け算です。それはあなたのPCを単一のタスクしかこなせない不器用な存在から、複数の重労働を同時に並行してこなす真のマルチタスク・パワーハウスへと進化させます。
あなたの次なるアクションはご自身のPCケースの蓋を開け、マザーボードと電源を見つめ直すことです。そこにもう一本のグラボを迎え入れるためのスペースとパワーは残っているか。もし答えがYESなら。あなたはただ一枚のグラボを追加するだけで、あなたのPC体験を革命的に変える切符を手にすることができます。想像してみてください。最高の画質と最高のフレームレートでゲームを楽しみながら、同時に最高の品質でその興奮を世界に配信するあなた自身の姿を。
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